DR. KILDARE TENOR & TRUMPET SOLO①

個人的には大大大名演だと思う、DR. KIRDAREのソロについて分析してみます。

SCANDALの時も申し上げました。当時のスカは録音に制限があるので「吹きたいこと・吹かなければならないこと」を彼らは確実にまとめて録音に望んでいます。このソロはまさにその典型です。

アドリブかどうか、とかどうでもいいんです。音楽として良いかどうか、それ以外何もいらないので。

この曲のアルフォンゾ先生のソロは本当に素晴らしいです。まとまっていて、凝縮された大大大名演です。

アルフォンゾ先生がどんな気持ちで吹いていらっしゃるのかを研究してみましょう。

吹いてみた

コピーしてみたものを実際吹いてみました。僕はアルトなんで細かいテナー的なアーテキュレーションとか運指がどうしてもうまくいかない所があったので、そこはご容赦ださい。

まずコード進行ですが、この曲はアメリカの当時の連ドラの主題歌で、スカオリジナルではまずないくらいコード進行が細かいです。ただ、それをアルフォンゾ先生は非常に律儀に(時に大らかに)歌い上げていらっしゃいます。

サブドミナントで始まる曲

まず最初の4小節を見てみます。

この曲はサブドミナント始まりです。サブドミナント始まりの曲ってエモいんですよ。代表的なのはいわゆる「丸サ進行(IV-III7−VIm〜)」です。YOASOBIとかは全曲これなんじゃないかってくらいこの進行でいろんないい曲作っていらっししゃいます。余談なんですけど、丸サ進行っていうのは(当然ですけど)椎名林檎が作った進行ではありません。グローバーワシントンジュニアって人が作った「JUST THE TWO OF US」っていう曲が元ネタです。って言われますけど実はこれよりもボビー・コールドウェルの方が2年前に同じ進行で曲書いてるんですよ。元祖はボビーさんです。個人的には82年のデバージの「I LIKE IT」って曲が大好きです。めちゃくちゃ話がそれちゃいました。この曲は丸サ進行ではありません。IVで始まる曲って事でした。

IVで始まるスタンダードっていうと「JUST FRIENDS」とかです。

1〜4小節目

話をもとに戻して、1小節目。

これはもうサブドミナントなんで、Gm7を吹いちゃってます。どっちでもいいやって感じですけど、多分Gm7っのb7から下がって上がるだけって思って吹いてます。
もちろんBbって考えても良いですけど、そうなるとこれBb6のアルペジオになります、そんなめんどくさいことしません。Gm7ですね。

後このフレーズで大切なのは開始音がテーマの最初の音と揃ってるんです。同じF音から始まるんです。これ結構重要なことで、こういう曲はテーマの力って絶大ですし、どんなにうまかろうがテーマを無視して吹いてはいけないんです。後半のトランペットのソロでもテーマをうまくもじったフレーズが出てきます。最高です。あとはまぁこのサブドミナントの時のトニックの音って特別エモいです。キャノンボールアダレイの枯葉のソロの導入のトニック音とかもーさいこーです。

2小節目の一音目。E音。これFのM7と思ってないです。IIIm7のAm7の5度って思ってます。同じトニックですから。

ていうことはここのBb-F-D7ていうコード進行を先生はGm7-Am7-D7て吹いてます。吹いてみてください。簡単にエモいです。

要するにアルフォンゾ先生は非常に頭が良いんです。頭がいいっていうのは物事を簡単に考える能力の事を言います。数学とかも結局こじれた式を簡単にするわけじゃないですか。ロジックなんですよ。とっても論理的な思考に優れた方なんだと思います。地球がひっくり返ったって「感性でアドリブでやるんじゃ」系のこじらせスカ奏者にはこんな演奏できません。

2小節目後半。これはコードが本来はDm7のとこなんですけどアルルフォンゾ先生はF#吹いてます。これは、VI7のD7を吹いてます。D7の3度です。このVIっていうコードはマイナーでもセブンスでもどっちでもイケてるからです。ノンダイアトニックの音を入れちゃうことで強烈な進行感が出てます。

III, VI, VIIのセブンスっていうのはいわゆるハーモニックマイナーを使います。臭くもなる。本とかネットの理論とか見るとセカンダリー・ドミナントってくくりで紹介されますが、そんな言葉を覚える必要はありません。3、6、7度セブンスはハーモニックマイナー、そう覚えた方が簡単です。(それに同じセカンダリー・ドミナントでもI7とかII7は別ものとして捉えないといけないからです。)

3小節目。ただの1小節のII-Vフレーズです。ただこのV7の3度からのクロマチック下降ライン。これなんでしょう。これビバップドミナントスケールってやつです。なんですけど、難しいこと考えてもしょうがなくて、ドミナントのときに3度からクロマチックで降りると2拍でトニックの5度に解決するから便利だねって覚えておいたらいいと思います。

4小節目。F6なのか。というよりはDm9を吹きたいようにも聴こえますよね。多分こういうのは手癖にちかいんじゃないですかね。

裏メロディ

ここまでの4小節を通して大きく捉えてとても重要なことがあります。各小節の最初の音だったりコードの最初の音だけ拾ってみると、とっても綺麗なラインが見えてきます。こういう感じ。

僕は昔こういうのを裏メロディって教わったんですけど実際はなんていうのかは知りません。こういうイケてるアドリブラインを紐解くと、各フレーズの

・最高音だけ拾う
・コードの頭の音だけ拾う
・小節の頭の音だけ拾う
・アクセントのある音だけ拾う

みたいなことをすると綺麗な半音進行(クリシェ)だったり、良いメロディラインが出てきたりします。

すげーいっぱい吹いたり難しいことやっててもめちゃくちゃご機嫌にウタってんな、、みたいなフレーズって大体こうなってます。この曲の最後のフレーズとかもそうなんです。後で説明します。

ちなみにキャノンボールアダレイとかはあんだけ吹き散らかして難しいことやりまくってんのにめっちゃ歌ってる、ご機嫌やな、、ってなるのは裏メロディがめっちゃ綺麗なんです。

例えばこういう、アダレイ先生の有名な枯葉のソロの冒頭ですけど。各フレーズの最高音がきれいに繋がってますよね。結構入り組んだフレーズなのに。

上手くて難しいことたくさんできてて、アダレイ先生のフレーズもたくさん使ってるけどなんかつまんない、ってのはだいたいフレーズコピーの繋ぎあわせで裏メロディがぐちゃぐちゃになっているパターンです。

でね、ペンタとかでこういう曲を一発っぽくやるとなんか合ってるしいえーいみたいにはなるんだけど、なんか空っぽだなってなっちゃうのは裏メロディがないからです。だってペンタに半音ないでしょ。当たり前です。ペンタってのは最大公約数みたいなもんなんです。それだとスカにならないです。ロックとかは別で、こんな風ににコードに沿ったソロなんてやったらダサいのでペンタ一発でやりましょう(本当はもちろん違いますけどね)。要するにロックとかポップスの延長でスカはできないんです。やってもいいけど、なりません、スカに。

EX

この冒頭4小節に関して簡単に上記を踏まえて例を作ってみました。偉そうな事いっていざ作ってみるとまぁ教則チックでダサいです。ごめんなさい。でもあくまで考え方の参考として、こういう発想で練習をして、実際の現場ではもっと音を間引いたりするといい感じになるかもしれませんし、センスがある人には俺なんて敵いません。参考まで。

EX1

2小節目はハーモニックマイナーのフレーズです。4小節目はスキャンダルのときにやりました、トニックセブンの7度の音に音価を持たせています。

EX2

EX3

これは裏メロディをアルフォンソさんと一緒に揃えてみたものです。まーそれだけでかなうわけなかったっすね。

5〜8小節目

5小節目。ここももちろんGm7を吹いてます。クロマチックな16部のフレーズです。これもめちゃくちゃよくやるやつです。5度からクロマチックで短3度まで加工するという。

問題は6,7小節目なんですけど、7小節目ってII7です。II7ってコードはこの世のコードの中で最も特殊なんです。この世のコードの中で、1番明るいコードなんです。こんなパカンとしたサウンドがするコードって他にないんですよ。

II7

II7っていうコードもいわゆるセカンダリー・ドミナントで頻出なんですが、これもII7として覚えた方がいいです。すごく特殊です。

このコードは特殊に処理をするのが普通です。僕はこの処理っていうのはガーシュインがやってそれ以降スタンダード化した、って教わりました。

ガーシュインはどう処理したのか。このコード(II7)のときはテンションに音価をもたせたんです。それいこうこの手法がスタンダードになります。

これ、実際にII7をコードトーンで吹くと絶対ダサいので試してみてください。

ガーシュインもそうだしあらゆる人がII7の時はテンションとかトライアドではないb7とかでメロディを作ってますし、アドリブでもそうです。

デュークエリントンのIN A MELLWO TONEとか、II7でメロディーはb7ですね。

ソロで言うとパッと思いついてしまったのはロイハーグローブがレイブランとやってるOUR DELIGHTのソロの冒頭とか。

思いっきりどテンションです。

あとあれです。aikoのボーイフレンドって言う曲のサビの「あーーーー」のところ。テトラポット登る前の。あれII7の9thです。テンションです。ちなみにあの曲はその後メロディがV7のb13に行くんです。aikoさんは本当に恐ろしいお人です。音楽モンスターですよ。

話戻すとあるフォンゾさんもここはそのようにやっている…。かな。ちょっと怪しいんですよね。どうもこのフレーズってGm7-C7のフレーズっぽくて。ありゃって、手を止めた感じもする。ただ、こじつけでいうとE音で2拍目が終わっていますが、これはG7の13度、テンションであるにはある。(僕にはC7の3度にいっちゃったように聴こえます。)まぁ結果オーライだと。

後半二拍は確実にDmを吹いてます。それでFの音からGの音へ繋げてC7へ。とっても盛り上げて余韻を残す、とっても良いフレーズですよね。このC7。

非常に長くなってしまったので、前半後半に分けることにします。
前半8小節はここまでです。

in Bb

in Eb

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